バングラデシュのハシナ前首相失脚、治安懸念に関する最新情報
15年間に及ぶシェイク・ハシナ前首相によるバングラデシュ統治が、突如終焉を迎えました。
バングラデシュで学生のデモ隊と警察が激しく衝突し、ハシナ前首相が辞任に追い込まれてから19日で2週間です。
隣国インドに逃亡したハシナ前首相は、息子のSNSを通じ、「革命の名を借りた暴力などによって多くの市民が命を落とした」と主張し、「凶悪な殺人と破壊行為に対する徹底的な捜査を要求する」と訴えています。
一方、バングラ当局は、デモ現場で男性が警官に殺害された事件に関与したとして、ハシナ前首相や警察幹部らを殺人罪などで次々に起訴しています。19日現在、ハシナ前首相は、殺人罪15件、誘拐罪1件、人道に対する罪と大量虐殺罪2件を含む18件の訴訟に直面しているようです。
また、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、バングラデシュで政権崩壊を引き起こした7月以降の一連の学生デモや8月上旬の政権崩壊後の混乱で、7月16日~8月11日の期間に約650人が死亡したとする報告書を発表しました。
報告書では、「治安部隊が意図的に殺傷能力の高い銃を発砲するなど、過剰な武力を行使した」と指摘されています。
北朝鮮みたいな国だと言われてきたバングラデシュ。
父親の肖像画や自身の肖像画を、国中の至る所で掲げさせていた一方で、自身に近しい人や親戚などに富が集中するように仕向けていたとされるハシナ前首相。警察や司法も、汚職まみれで、腐りきっていました。
メディアも、アワミリーグ寄りの報道ばかりが目立っていましたが、市民からは見透かされていたということでしょう。
また、ハシナ前首相は失脚以前から、反体制派の大量拘束や超法規的な殺害など、政権による広範な人権侵害が指摘されていました。
まさに因果応報です。
どこかの東方の国でも、与党議員による多額の裏金の存在が明らかになったり、与党が反日集団である統一教会にべったりであったり、その他にも様々な不祥事が起きたりしており、国民からの信頼の無さという点では、ハシナ前首相時代のバングラデシュと大差ないかもしれません。
暴力ではなく、選挙による政権交代という形で、因果応報となる日が果たしてくるのか、勝手に刮目したいと思います。
バングラは平常に戻りつつあるも、いまだに治安面で懸念も
ハシナ前首相やアワミリーグの幹部らが国外逃亡し、アワミリーグは市民からの批判の的になりました。
また、ハシナ前首相時代から、汚職にまみれていた警察官に対する市民の怒りも爆発し、首都ダッカでは、一部の市民らが街中で警察官をリンチして公開処刑したり、各所にあった警察官が駐在するための小屋が破壊されたりするなどして、無法地帯と化しました。
そのため、多くの外国人が居住するダッカ市バリダラ地区では、警察官ではなく、軍が警備しているようです。
警察は市民からの報復をおそれて機能不全に陥り、街中からは警察官の姿が消え、学生や軍関係者らが交差点に立ち、警察官に代わって交通整理を行っていました。
ですが、最近では、暫定政権の呼びかけもあり、ちらほら警察官の姿も戻りつつあるようです。
治安面は少しずつ回復しつつあるようですが、それでも強盗事件や破壊行為などはいまだに起きているようですし、特に夜間は注意が必要です。
ユヌス氏、ロヒンギャ難民と繊維産業への支援を継続する意向
2006年にノーベル平和賞を受賞した経済学者であるムハマド・ユヌス氏は、学生からの電話で、「あなただけが信頼できる人物だ」と首席顧問への就任を求められ、トップに就任したようです。
18日には、初の主要政策演説を行い、ロヒンギャ難民と繊維産業への支援を継続する意向を示しています。
また、ハシナ政権の崩壊につながった反政府デモにおける殺人や暴力行為の解明や責任追及のため、国連主導の調査団を受け入れると述べ、数か月以内に総選挙の実施を目指すという考えも示しました。
さらには、政権に忖度し独立性の欠如が指摘される司法の在り方も変えると訴えました。
ハシナ失脚の時点で、次のトップは誰かと考えた時、ユヌス氏以外に適任者がいなかったですが、年齢が84歳らしく、81歳で米国史上最高齢大統領のバイデン大統領よりも年上で、健康面などが少し心配です。
問題だらけのバングラデシュの舵取りは非常に難しいと思いますが、学生たちと協力して、ユヌス氏がバングラデシュを良く方向に導いてくれることに期待したいです。
現在は新生バングラデシュへの変革期
8月15日は、ハシナ前首相の父親ムジブル・ラーマンの命日なので、毎年バングラでは仕事は休みでしたが、ハシナ前首相が国外逃亡し、今年から平日になったようです。
また、ダッカ市内のある地域では、橋の料金所が壊されて、これまで片道50タカ支払っていた通行料もかからなくなったようです。
一時的なものかもしれませんが、学生らが、バスの停車位置や、リキシャの走る車道などをコントロールし、以前よりも交通整理ができているという話もあります。
これまで積もり積もった市民の鬱憤が爆発し、一気に国が変わろうとしています。これまでも混沌としていたバングラデシュが、警察の不在に乗じて一部の悪党らの歯止めが効かず、更にカオスとなっている印象です。
今回の政権崩壊は、「バングラデシュのZ世代革命」とも呼ばれているようです。
外国人でも安心して生活できるようなバングラデシュに戻るには、これからどれほどの歳月が必要になるのか、まったく見当も付きませんが、今回の政権崩壊の原動力にもなった<バングラデシュの若い力>に期待したいです。
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